パズルストーリーと割り切るべきか
ひじょーに売れ筋のミステリーということで前から読もうリストに入れていた森博嗣著「すべてがFになる」読了。
う。うーーん。これは。どうしたらいいのかって感じです。名だたるミステリ読みの方々が高評価を出しているんだから、きっと名作なんだろう、そうなんだろう、と、思えない私は。…バカ?(天才と伍して話ができる器だとは死んでも思っちゃいないが)
元より文系どっぷりではあるけど、世の流れでソフト業界に身をおいたことがあるから、用語がわからんとか謎解きが理解できないとかはないんですが(さすがにいきなり「F」の意味がわかったりはしないけど)。いや、それで三人も人を殺してええんか?と、やっぱ思っちゃうんですよねえ…。
例えば、昔のトリック重視型のミステリだったら、トリックの出来具合の美しさに一つの鑑賞ポイントが与えられていたわけで、動機や登場人物の心理が多少「?」であってもよいという見方があったわけですが。昨今の人の気持ちにべったり寄り添った、読後腑に落ちやすい動機を提示してくる物語に慣れすぎちゃったのかなあ、この話は読み終わった後にどうしても「ホントにこれで人殺してもええんかなあ?」という疑問が付きまといます。(大田忠司さん!あれはあれでいいとおっしゃってるってことは、わかんねーと言ってる私がドンなんですよね?とほほ)
実際の犯罪事件も言われても理解不能な動機によるものがどんどん増えてますから、これはこれでリアルなのかもしんないけど。人の気持ちなんて、ホントのところは細々解析できたりするもんじゃないし。
相方が言うには、この話では動機とか登場人物への感情移入とかは重要視されてないんじゃないの?だそうです。純粋にパスルストーリーとしておもしろければいいんじゃないか、と。
だけどねえ。登場人物が全般に体温低そうな人ばかりなんで、もしかしたらこの世界の人は理に適うと判定されたらスイッチ切るみたいに人の命も切れるのかなあ?と不思議な気持ちになったり。それでいて好き嫌い、というか、恋愛感情も超クールながら盛り込まれたりしてるんです。作中で語られるメインキャラクタの価値観からすると、あんな理不尽な感情、めんどくさくていやなんじゃないかと思うんですが、それはそれでまた別の話なのかなあ。
あと、作者は脳みそ筋肉の肉体労働系は嫌いなのかなあと思いました。途中から出てくる警察の人の扱いがちょっとあんまりなほど軽んじられてる(てーか、理解力低のおばか風に見える)のが、さすがにかわいそうな気がしてきた。最後まで犯人に翻弄されてるし。
いや、おもしろくないわけじゃないですよ。きっと読む人を選ぶ話なのね。
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