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2004.09.28

森村桂とわたし

 作家であり、お菓子屋さんであり、最近は絵も書いていたという森村桂さんが亡くなった。今年はなぜか、作家の訃報が相次ぐ。年齢によるものや病によるものであっても読者にとっては残念なものだけれど、自殺と聞くと「なぜ」の気持ちがぬぐえない。森村さんも「なぜ」と聞きたくなってしまう、そんな亡くなり方だった。
 正直、私は森村桂の著書をそんなに読んではいない。一番ヒットした「天国に一番近い島」も読んだかどうだか覚えていない。不良読者。でも、一時期の私は森村桂の絶対的な影響下にあった。
 お菓子やケーキが(食べるものとして)大好きだった私は、小学四年生くらいでホットケーキやプリンを作り始めた。理由は母が作ってくれるのを待ってたら、いつ食べられるかわからなかったから。自分で作ればいつでも好きなときに食べられる。ホットケーキはへりだけが焦げないよう全面キツネ色になるように工夫したし、プリンはハウスのミックス粉を使うのではなく、牛乳と卵で蒸しプリンを作った。子どもが火を使うから、親にしてみれば冷や冷やものだったと思うけど、私の食い意地は親の心配を上回っていた。
 ちょうどその年頃に読んだのが森村桂の「お菓子とわたし」だった。自分で買うには幼すぎたから、多分母の本だったんだと思う。もう、むさぼるように読みましたよ。だって全編お菓子の話ばっかり。お菓子の作り方ばっかり。アマゾンで久しぶりに収められたタイトルを見たけど、もう二十年は読んでないってのにほとんど憶えてた。バナナケーキにはあこがれて何度も作ったし、キャトルキャーという言葉もこの本で知った。
 あんまり読み込みすぎて、欲望が膨らみすぎて、小学校六年のとき親にゴネまくって誕生日にオーブンを買ってもらった。オーブンなしではクッキーもスポンジケーキもシュークリームも焼けない。オーブンが使えなくて、なんのお菓子作りか。とか、子どもに真っ赤になって主張されても親は困るよなあ。でも、ウッカリ「お菓子とわたし」を読ませてしまったのはきっとおかんで、この本の中で、森村さんはいかに苦労してオーブンを手に入れたかを一章を割いて書いていた。その情熱が半端に乗り移っている暴走子どもを無碍に止められなかったんだろう。もしかしたら、電気を使うオーブンの方がコンロで火を使われるより気が楽だったからかもしれないけど。
 買ってもらったオーブンで、私は調子に乗っていろんなお菓子を焼いた。クッキーやシュークリームは好評で、お客さんに出したりもしたけど、へっちょり膨らまないスポンジケーキは売れなくて、一人でぐじぐじ食べたりした。浪人して予備校の寮に移るまで、オーブンはかなり活躍したと思う。
 今は面倒くさくなってすっかりお菓子も作らなくなったけど、小学生から高校までの、お菓子作りに四苦八苦していた時期は森村桂の本を読んだからこそある。以降お菓子好きが激しくなったのも、きっと森村桂の影響だ。
 そういうのを懐かしく思い出して、ちょっと感傷的になったりした。今はもう、森村桂を読む女の子なんていないんだろうなあ。「天国に一番近い島」も、かろうじて原田知世の映画が知られてるだけかもなあ。

※追記
 9/30のアクセス数が異様に伸びてて、いったいなんで?とコワくなった。アクセス解析によれば森村桂さんをキーワードに来られてる方が多いんですね。すいません、私語りしかなくて。
 ちょっと調べてみたんですが、森村さんの本、特に初期の作品は入手が難しいものが多いようです。電子書店パピレスなどに一部収録されているようですが。印刷物で読みたい方はBOOK OFFの百円棚をあさる方が早いかも。(森瑶子なら一揃いそろうんだが)また、オンライン古書店「アン・プリヴェの古書」に特集ページができてました。
 森村さんは初期に明るく元気な女の子の話をたくさん書かれていたけど(森村桂文庫なんて、今のコバルトやホワイトハートの前身みたいなものかも)、実際には体が弱く楽しいばかりの青春を送られていたわけではないようです。また、最初の結婚の失敗など、つらい思いをされたことも多かったよう。(著書「それでも朝は来る」の一節が「動物と文学」に引用されています)作家ですから、実生活をそのまま書いたわけではなかったんですね。

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