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2005.01.10

ある訃報

 新聞の訃報欄で橋本幸治監督死去の報を読みました。代表作として上げられていたのが84年版「ゴジラ」。そして「さよならジュピター」。
 ここで古SFヲとしては様々な思いが去来するのを止められません。死者にむち打つようなことを言っても詮無いが、20年経って未だネットで「北京原人」や「だいじょうぶ マイフレンド」などと並ぶダメ邦画として「さよならジュピター」が上がっているのを見るたびに忸怩たる気持ちになる、その責任はどこにあるのかと。東宝と橋本監督、あんたたちのせいやないの?と言いたくなるのを堪えきれません。
 当時、SFファンは誰しも「さよならジュピター」の制作に期待と不安を抱いていました。何せSF的センス皆無の邦画界。「スターウォーズ」人気の尻馬に乗って大作制作をブチ上げたはいいが、今までの成果を見るにSFとはほど遠い珍作ができるのは必至。そのあきらめの反面、大小松左京が全面バックアップを買って出てるのだから、というささやかな期待をどうしても捨てることができなかったのです。
 外国製のマトモなSF映画を見て「こんな映画が作れたらなあ」と夢見たSF関係者は、プロアマ問わずたくさんいて、小松さんは「さよならジュピター」制作のためにイオという会社まで立ち上げ、様々なアイディアを出し人材を集め、できる限りのバックアップをしてました。プロジェクトに力を貸していたのはSF界でもそうそうたるメンバーだったから、やっぱり「あるいは」「もしや」と思っちゃうじゃないですか。
 しかし。実際に映画の制作に入ると、「海外SF映画に迫る映画を」という夢や希望はことごとく崩れていきました。制作期間、費用、その他諸々の現場的事情のために、実作品はどんどん矮小化。そりゃー商業作品ですからね、金勘定は大事です。でも、恐れ多くも「2001年」あたりを目標に掲げて始めたんだからさあ、それなりに踏ん張らないと。今さら「こじんまりとした佳作」を狙うわけにもいかないんだしさあ。
 加えて監督に就任した橋本氏のコメントを聞いて、少なくとも私の周囲のSF友達はみな脱力した。「テーマは愛です」。それも、男女の愛がメインテーマなんだって。だめじゃん。せっかく小松節ばりばりの原作を得たのに、なんでそういう卑近な話にしちゃうのよ。
 かくしてできあがった映画「さよならジュピター」を見る、それなりに制作過程の情報を得ていたSFファンの心中は複雑でした。最初の構想通りあそこがああなっていれば。ここはこうなるはずだったのに。なんちゅー安っぽさ、ちゃちっぽさ。加えて、なんだ?主役カップルの無重力○○○シーン。確かに原作にもあるよ。でも別にわざわざ映画で取り上げるほどの意味はないっしょ。だいたいこの二人は、トミノ的表現をすると魂を重力に引かれた人と宇宙に行きたい・知らない世界を見たいという人の齟齬や葛藤を代表するのが本来の役割なのであって。
 もういいです。
 もちろん、当時すでに社会風俗的なものに関する小松左京のアンテナが古びているのは、いくらファンでも気づいてましたよ。ジュピター教団の描写は原作でも苦しかった。だけど、せっかく別媒体に移すんだから、むしろその辺をフォローして、ですね。
 もういいです。
 かくして後世に残る国産ダメSF映画「さよならジュピター」ができあがりました。今も語り継がれています。小松さん、この映画に関して表だっては擁護的発言してますが、本音のところはどうなのかなあ。あれだけ中枢に噛めば、責任を問われる立場ではありましょうが。(なんたって総監督としてクレジットされてるし、「脚本」ともなってるし)
 「ローレライ」の予告編を見ると、ほんとにエエ時代になったなあと思います。苦節二十年、日本映画はここまで来た。
 さておき。邦画SFに金輪際期待すな、と私にトラウマを刻み込んだ橋本監督。訃報欄にこの二作の名が上がるのを知っていたら、どう感じられたでしょうか。

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