「歌う船」、読了
しばらく前にBookOffの安売り棚から救出してきたアン・マキャフリーの「歌う船」、読了。生存困難な身体に生まれついた女の子が、その頭脳の優秀さを買われて宇宙船をコントロールするサイボーグとして育てられるって話で、ジャンルとしてはもう古典の域かも。人間的な身体を持たない彼女は16才で独り立ちし、宇宙船の頭脳となってこの世界の政治的機関から依頼される仕事をこなしつつ、機械の身体と教育に費やされた借金を返済していくのです。って書くと、なにやら浪速の商人少女の一代記みたいですね(笑)。
残念ながら(?)「歌う船」は宇宙船型サイボーグじゃりン子チエの話ではなく、もっとロマンティックです。主人公は殻人(頭脳のみのサイボーグをこの作品世界ではこう呼ぶ)としては珍しく、古典文学に興味を持ち自ら歌う楽しみを知る文学少女。宇宙船を操る知識と仕事への誠実さはプロだけど、中身は年相応に娘なわけで。起こる事件はまさにSFだけど、印象としてはヒロインの言動重視であまり固い印象なく読める。読めるけど。
今どきのラノベ読み慣れてる読者には、ヒロインの描写が食い足りないだろうなあ。心理学を応用した教育の成果で、サイボーグであることに引け目を感じずむしろ誇りを持っているというキャラ立てはいいんだけど、怒ったり嘆いたり喜んだりの感情の起伏の間がよく読み取れないことがありまして。…私の読解力が低なせいかもしれませんが。
ヒロインが選ぶパートナーが、若い娘のころは使命感に燃える血気盛んタイプながらちょっと暗い過去持ちの文学青年風、それが物語終盤ではしたたかで底意地が悪くて素直じゃなくて情熱的なタフガイになるあたりに成長の軌跡が見えます(笑)。ナイアルって私の脳内イメージがナイトライダーの人とかジョンパンとか、往年のアメリカドラマのヒーローなんですがおかしいでしょうか。
データのやりとりをする媒体が磁気テープで「えええー?」だったんですが、これって書かれたのが1960年代なんですね。アポロ計画のコンピューターがあのレベル、紙テープ制御現役時代だから、当時は十分最先端だったんだろうなあ。
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