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2005.08.11

おっさん世代のセクシャルモデル

 えーと。あきれてください。まだチェックしてますとも、渡辺淳一先生渾身の連載「愛の流刑地」。予定通り11月というか10月いっぱいくらいまでの連載ならヲチ期間はあと三ヶ月なのです。今さら脱落するのもあまりに半端すぎて、後でびみょーな後悔をしそうなもんだから。幸い脳みそ使って読む必要がないので、毒を食らわば皿まで気分です。こんな毒の耐性ついても、今後の人生で何の役に立つのかわかりませんが。てーか、役立つ人生なんか送りたくない。

 本編は。
 主人公菊爺がボイスレコーダーに録音していた箱根旅行でのえっちの様子を再生しつつ一人えっちしたり、義父母の上京で逢瀬の予定をつぶされた後、不愉快冬香ちゃんが電話してきたのをいいことにテレホンえっちしてみたりの合間に、執筆の苦悩が全く描かれないままに15年ぶりの長編(400枚って長いを力説。さすが直木賞で分厚い二段組作品の読破を拒んだナベ爺)が完成していました。タイトル「虚無と熱情」はそのままですが、内容は若いときの妻&愛人とのドロドロものから冬香との「性愛を極めた」(笑)つき合いを題材にしたものにいつの間にか変更、しかも主人公の名前が無意と満子。ヒロインの名前にわざわざルビがふってあるのは日経の配慮でしょうか。女の深い性的到達点からすれば、射精したとたんに全てが無意味になる男の性のなんとむなしいことよ、みたいな内容だそうで。ハァ?今どき何を寝言言ってんでしょうか、この爺は。「女の方が絶対いいよな。男は奉仕するだけなのさ」なんて耳かき理論を未だに新発見のごとく振りかざすやつがいるとは思わなかったよ。
 こんな言い古された表面的な内容の話を意気揚々と名作が書けた!と不倫相手に自慢、どころかバイト先の大学の講師やらつき合いの浅そうな知り合いに400枚のコピー束を渡して下読みを強要する菊爺。縁のある出版社二社にも持ち込んで、これがベストセラーになったら冬香を離婚させてぐえへへへと現実味のない妄想に浸るニート親父55才の野望は、しかし、寒風吹きすさぶ出版業界の現実の前にもろくも崩れ去ってしまうのでした。
 惰性のようにだらだら「愛ルケ」と関わってきましたが、この菊爺の根拠ない自信作が出版社の人たちに邪険に扱われる下りが、冗長な駄文で唯一小説っぽく感じられました。自己チューでダメ人間の菊爺という人物描写が、ナベ爺とは思えないほどリアルに活写されてたし。もしかしてナベ爺の実体験か?
 15年もブランクがある作家の再出発作としては地味で暗くて華がない・売りにくいと両社の評。(なんたってタイトルが「虚無と熱情」というダサくささ、登場人物の名前が口にするのもアレな無意と満子、その上謎な「愛するFへ」なんて献辞つき、こんな気味悪いもの出版する無謀な会社なんて、あったら見てみたいくらいのもんで)否定的な作品評に、無理に自分からかけた電話をガチャ切り。路地で「お前はなにさまなのだ!」と叫び、接待で疲れている友人を飲み屋に呼び出し相手のキープでさっさと飲み始める。出版できない旨気遣いながら伝える友人に「もう聞きたくない」と耳を塞ぎ目を閉じるかつてのベストセラー作家・現在ただの引きこもりの55才。
 いやーまったく、「お前の方こそ何様よ?」。55年も生きててここまでダメな男、相手にする女の気がしれません。
 その、どん底のダメ男と関わる希有な女、無責任にも作文を下読みして傑作と持ち上げた冬香が登場すると、「愛ルケ」はいつものエロ度の低いエロ描写満載の駄文に逆戻りします。この話の元凶はやっぱりこの女か…。練りの足りない思考ルーチン搭載のロボットみたいなヌルいしゃべりしかできない、妻も母も放棄してるくせに離婚しようともしない、セクサロイドか妄想女とでも解釈しないと成立しそうもない不可解なヒロインは、原稿が袖にされたことを聞くなり、早速「ひどいわ」とか「その人、間違ってる」とかボキャ貧な慰めを口にして菊爺を甘えさせまくり。そのままえちーに突入して、母親役と娼婦役を見事にこなします。そして、とことん自分に甘い菊爺は口に苦い良薬をくれる友人よりも冬香のありがたさを称えまくり。そりゃ、同性の友達ができんわな。
 中坊のようにえっちで元気を充填した菊爺は、原稿を酷評した奴らよ、今に見ておれと息巻くのでした。でも、実際には浴衣姿の冬香と花火見てその後お泊まり一晩中えっちの喜びに浸る方が大事みたいなんで、「キョムネツ」のことは早晩忘れてしまいそうですな。

 初ナベ爺が、幸か不幸か当時自前で購読していた日経掲載の「失楽園」で、「これはエロうんぬん以前に小説としてどうデスカー?」と呆れて以後ナベ爺にお金払う気が一切なくなった私なので、まともと言われる初期作品など全く知らないのですが。
 この人、こんなにキャラ書けなくて今までどうやって小説書いてきたのか不思議です。比較的マシなのが主人公の菊爺一人、他はみんな書き割りレベルで存在感が皆無、冬香のリアリティのなさ・存在感ZEROのキャラ造形はもはや才能としか思えず。菊爺にしたって、ナベ爺的には少ししょぼくれてるけど基本的にはいい男のつもりでいるらしいのが理解不能。(一応)恋愛小説の主人公なのに、絶対関わり合いになりたくない不潔な自己チュー男にしか見えんってのはマズいのでは。
 ストーリーテリングの問題もあるでしょうが、物語を制御できる厚みのあるキャラが一人もいないってすごすぎます。これじゃあ、会ってヤる、以外の展開のしようがないわなあ…。


 「愛ルケ」を毎日楽しみに読んで、冬香をアイドルのように称えるおやじがホントに日本中にいるのか…。と何十回脱力したかわかりませんが、今回はまたトホホ度倍増。おじさんたちは相変わらず、昼は聖母で夜は娼婦な女がお好き。エエ年になっても、自分を鍛えてくれる厳母よりもただただ甘えさせてくれるおかんが欲しいようです。
 てーか、「ヒロインは人妻」「エロい状況である」という記号だけで、キャラに人妻としてのリアリティ・同一人物としての一貫性・造形の深みなんかなくても、エロの描写が即物的で色気がなくても、「えろーい」「冬香っていい女」と思えるのか。「小説を読んでる」わけじゃないのか? ハーレクインロマンスの方がよっぽど工夫してバリエーション豊かに書かれてまっせ。道具や過激なシチュエーションを持ち出さなくても、童貞少年のダメダメ初体験ものだって正しい意味で十分エロいものは書けるはずじゃないかと。
 それなのに「愛ルケ」をむふむふ楽しみにしてるおじさんタイプほど、「女子供」とか平気で言ったりするんだよなあ。普段はろくに物語と縁がないくせに、恋愛ドラマやマンガを楽しむ層を軽く見てたりするんだよなあ。
 日本のオフィスからセクハラが減る日はまだ遠い

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Comments

初めまして。いつも密かに楽しみに読ませて頂いております。

我が家でとってるローカルな新聞で渡辺大先生が回顧録のようなものを連載なさってるのですが、それによると大先生は「学生からすぐ作家になったひとを評価しないのです」とのこと。「社会に出て実務経験が10年以上無いとだめ」なんだそうです。思わず鼻で笑いました。

Posted by: 小藍 | 2005.08.13 at 12:17 PM

>小藍さま
初めておいでの方にこんなスローなRESで申し訳ないです。
一小市民がたわいない出来事をぶつぶつつぶやいているだけのblogですが、お楽しみいただいているとのこと、ありがとうございます。

北海道の新聞でナベ爺さまが連載をしているという話はネットでちらほら見ていましたが、そんな暴言吐いてらしたとは。
実務経験が生かせるかどうかはご本人の心構え次第。資質によってはただの宝の持ち腐れにもなるでしょうに。
むしろかつての実務経験をいつまでーも振りかざして、うそ八百を書き散らす害の方が問題ではないかと思う爺の振る舞いです。

本編は相変わらずのヌルーいエロシーンが続いておりますね。暑さで賞味期限切れになったでしょうか(笑)。

Posted by: きいろ | 2005.08.20 at 05:12 PM

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