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2006.12.07

「空の中」、読了

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 おもしろいっ。
 とまずは言っておきます。大人チーム、子どもチーム、それぞれに事情を抱えた人々が大空に潜んでいたある存在と邂逅する。それによって起きる大事件。人類の生存すら脅かすそれとの接触で変わるもの、変わらないもの、私的思惑を抱えるもの。はらはらとかどきどきがちゃんとちりばめてあって、ラノベというより昔のジュブナイルみたい。(厳密なラノベの定義はわかんないけど、風合いがということで)子どもチームに精神的成長があるし、なんといっても男の子が主人公だ!(気弱げな性格だけど)
 読んでる間中先が楽しみで、特にアレが○○されて事態急変、すわっ! ってあたりがわくわくものでした。<ドンパチ好き。
 だからこそ、というか、読み終った後の気分は、おもしろかった、けど、…やっぱりかって感じで。

 (で、今からネタ割るので、未読で読みたい方は退避)

 読んでる途中でこの結末はだいたい読めていたし、出だしからしてこういうオチ方しかなかろう、これが一番なじむ終り方だろうと納得はしてるんだけど、古SF読みとしてはこー…。
 地球上で人類とは違う体系を生きてきた知的生命体とファーストコンタクトする話なんですよ、これ。それなのに、なぜみんな、あっさりと元の日常へと戻っていってしまうの? 人類が、人類以外の、対等に語り合える、でもまったく違う歴史と価値観と文化と、その他もろもろを持った知性と出会ったわけですよ。そこにもっと種としてのインパクト、ちゅーか、知性体としての新たなステージに対する興奮みたいなのがないのかなあ…。
 少しだけ変わった日常で、以前とは少し違う関係が結べるようになった身近な人とのことが物語の帰結になる。それはそれでいいことだし、話の締めとしては美しい。平凡な日常のありがたさ、そこに戻るのにも勇気とかいろんなものが必要なのもわかる。
 物語って、書き手の興味の対象とそれを受け取るであろう人々の興味が反映される。だから、物語の重心が知的興奮よりも人間関係にあるのは今という時代では当然のことなんだろう。気の置けない幼なじみでしかなかったはずの女の子が特別な存在なのだと気づくほうが、人生での重大な出来事なのかもしれない。読み手にとっても一番の関心事なのかもしれない。
 だけどだけどー。
 君は長い人類の歴史の中で、誰も遭遇したことのない事態を体験したんだよ! その結果が、その。そういうことで丸くまとまっておしまいなの? なんかこー、おばさん的にはがっかりなのよ。
 楽しく読んだからこその瑣末な不満なんだろう。ただ、このうっすらと低いフラストレーションは、若い作家の作品について回ることになるかもしれないと思うとちょっと悲しい。

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Comments

おおお、わたしはこの作品にはセンスオブワンダーとかステージの問題は一切期待しませんでした(笑)
きいろさんはやっぱり、正統派SF読みなのですね。
もうわたしは忘れかかっているのかも(^^;
なんか他にもオットの本で読んだ、女性パイロットものとかとの共通点みたいなものを引きずって読んでしまいました。

Posted by: luna | 2006.12.18 at 08:21 AM

そうですよねえ、普通はセンスオブワンダーとか期待しないで読むタイプの話だと思います。私の感覚がどうかしてるんですっ。
私はlunaさんが思われるほど正統派なSF読みじゃないです(^_^;)。むしろかなり不良な読者でして。こんなふうに考えてしまうのは、きっとSF読みだした時代のせいじゃないかと。

しかし、有川浩さんって電撃から出てずいぶん広い活動範囲の人になったみたいですね。...恋愛の方にシフトするのは、もっいないからやめてほしいなーと思いますが。

Posted by: きいろ | 2007.01.15 at 02:28 AM

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