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2008.05.21

ダコタ・ファニング、恐るべし

 レディス・デーだったので「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」を見に行ってきました。そっち方面に興味のある方には有名なヴィヴィアン・ガールズを描いたアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガーに関するドキュメンタリー映画です。こっちでは東京より二ヶ月近くも遅れて封切った上、真っ当な上映期間が二週間しかないという…。まあ、題材的にたくさんお客さんが来る映画でもないから仕方ないですけども。
 私がヘンリー・ダーガーを知ったのは里の両親が買っていた「芸術新潮」でのアウトサイダー・アーティストの特集でだったと思います。カラーページに掲載されたその作品はとてもうまいとは思えず、「なんでこれが『芸術新潮』に?」と不思議に感じたものでしたが、描いた本人が絵画の勉強を全くしたことがない、どころか十分な教育を受けるチャンスも得られず、生涯を清掃人として貧しく生きた全く無名の市井人で、しかしその部屋にたった一つの物語「非現実の王国で」を表出するために数百枚の巨大な絵と一万ページを越える物語を残したと聞いて、これはうまいへたといった言葉で括る世界じゃないんだな、と漠然とした驚きを感じたのです。しかもダーガー本人はこの膨大なボリュームの物語を誰に見せる気もなく自分自身のためだけに描き、その死に際しては全部を捨てることを望んでいたらしいのです。作品は本人の意志に反して死後も残り、多くの人に知られることになってしまいましたが。
 その後、ぽつぽつと雑誌のアウトサイダー・アーティストの特集を読み、そのたびにヘンリー・ダーガーのことをちょっとずつ知りはしたのですが、今回見た映画でやっぱり断片的な雑誌の記事ではとても「知った」なんて言えやしないんだなとしみじみ思いました。一般にアウトサイダー・アートは知的障害を持つ人が手がけることが多いと言われるため、私はヘンリー・ダーガーもそういう人の一人かと勝手に思い込んでいたし。この映画で知るダーガーは、たぶん普通の人。でもすさまじく孤独な人。孤独に自分の世界を守ることを苦痛としなかった人。強い信仰を持ち、その信仰の矛盾に苛まれた人。
 人間の想像力というか妄想力ってなんて強力なんだろうと思う。一つの物語を綴り続ける精神力があれば、いや、その世界を維持したいという強い意志さえあれば、孤独であっても生きていける。それを本人が真に望んでいたかどうかはわからないけれど。
 なんかすごい。ただ、すごいとしか言いようのない人生。何にしても私は、ひたすら半端であまたの砂の中の一粒として死んでいく凡人なんだなーと思った。それはそれで身の丈にあった、けして不幸ではない人生だけど。
 去年東京であった展示会、やっぱり行きたかったな。

 この映画はドキュメンタリーなんで、進行は主に男女二人のナレーションによります。この女性のナレーションが妙に幼い声で、それなのに声の情報量が多いというか、端的に言うと「うまいっ」って感じで、ちとうなりながら見ていたんですが、テロップ見てそれがダコタ・ファニングだと知りびっくり。役者として画面に出れば、それは文句なく年齢を超えたうまい役者さんなんだけど、声だけでもこれか! という。才能は溢れ出るもんなんだな、とこちらでも驚かされた凡人なのでした。

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