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2009.11.29

婚活女子は「ゼロの焦点」を読むといいと思うよ

 通勤時間限定で「ゼロの焦点」を絶賛読書中。ミステリをこんなぶつ切りで読んで大丈夫なのか>自分。(通勤時間は正味で10分程度)
 とりあえず今のところ事態はちゃんと把握できてるけど、風呂敷畳みに入ったらまとめて家で読むと思われ。<をいをい。
 それにしても、未だにドラマ原作として採用され、そのドラマがそこそこの視聴率を上げる松本清張。真っ当に読んだのはもしかしたら初めてかもだけど、しみじみそれも当然かもなあと思う。原作がしっかりしてるから、派生物もそれなりの出来になるんだろう。なんちゅーか、人の描かれ方がすごいリアル。昔、古典な感じのパズラー系ミステリをまとめて読んだ時期があったけど、小説としての満足度とは別に女性の描写が今ひとつ類型的だなあと感じたりして、その点はちょっと食い足りなかった。「ゼロの焦点」はなんたって昭和30年代前半に書かれた小説なんで今時感覚とはずいぶん違う部分もあるけど、ときどきヒロインのカンの働き方や気持ちの揺れに「ああ、わかるわかる」と思わされるとこがあって、そこがおもしろいしちょっと怖い。当然ながら女性の本質は50年100年で変わるものではないから、そこをちゃんと押さえてあれば古い小説でもけっこういける。とはいえ、書いてるのは50才近いおっさんなわけで、それでこれかい! と思うと怖い。

 「ゼロの焦点」のヒロインの禎子さんは26才のOL。会社ではきれいに分類される方で好きになった人の一人や二人はいたけど成就に至らず、タイミングなのか今までお断りしていた見合いをそのときはなんとなく受ける気になって36才の鵜原憲一と結婚する。鵜原と結婚前に会ったのは見合いの席くらいで結婚式を迎え、だから真っ当に話を交わしたのは新婚旅行のときになって。前歴や趣味、人柄もろくにわからないけど、これからおいおいこの人と夫婦になって行くんだろうなと納得している。しかし、そんな夫は結婚一週間で前任地の引き継ぎをするために出張に出たまま行方不明に。彼の細かな生活を知らない禎子さんは失踪の原因が全く思いつかず、彼を探して前任地の金沢を旅することになる。
 今20才前後の娘さんが聞いたら「をいをい?」ってな結婚だけども、当時はこんなのは珍しくなかったんだと思う。そうでないと、通俗的に読まれる小説として読者がついてこない。「んなわけねーだろー」な特殊なヒロインだと、読者は感情移入しにくいし。
 ヒロインは東京の人で時代背景は昭和30年代だから、地方都市ではもっと遅く、昭和40年代くらいまではこういう見合い結婚は結構あったんじゃないか? ちゅーか、知り合いの親世代では実際に聞く話だったりする。結婚するまでろくにデートもない、相手のことをよく知らないままの結婚。それでも、熟年離婚しちゃうケースもなくはないけどうまくいって穏やかな老後を送ってる夫婦も少なくない。結婚は、基本的には長いつき合いだから(離婚もあるけども)、恋人同士の数年がうまくいったからってその後が保証されるわけじゃないしね…。
 つまり婚活女性が言うところの「ふつーに暮らしていて広がる人間関係の中でいいなと思える異性に出会って、自然に結婚に至る」というふつーの結婚、ふつーのしあわせなんてものは昔もなかっただろうと。「なぜ他の人、親世代は手に入れられた普通の結婚ができないの?」って、それはないものだから手に入らないのです。

 作中ヒロインは美人として書かれていて、途中思いを寄せて彼女に協力してくれる人なんかも出てくる。行方不明になったダンナは、だから妻となった女性の容貌の点では大満足で見合いを受けたのかも、と物語的には腑に落ちるけど、現実のろくに会わないまま結婚では見栄えも問わず、誠実だとかよく働くだとか子どもをたくさん産めそうな身体つきだとか育ちがしっかりしてるだとか、お互いそのくらいで納得して成立した見合いもたくさんあった模様。
 よく今時男性は婚活女性を条件多いとかワガママとか身のほど知れ、みたいなことをネットで毒吐きしてるけど、当時の男性も今のあなた方に比べると全然条件ユルかったわけで、お互いさまだと思います。

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2009.11.28

男の方がロマンチスト

 「マリソル」のサイトで安藤優子さんが是枝監督と「空気人形」についての対談をやってました。
 対談の中でどんな男性が空気人形を望むのか、という話が進んでいき、女性関係に傷ついた男の人が求める傾向もあるらしいと聞いた安藤さんが「女性だって傷ついてるけど、でもがんばってるんです(たぶん、恋愛に)」と反論してるんだけど。
 私が思うに、男の方が打たれ弱いよね。人間の感情が絡む事態でのダメージに。
 あと、男の方が自分のロマンに忠実というか頑固だなあとも思う。
 女の人は内心「こんなの、絶対叶いっこない!」とわかってる妄想や夢を抱くとき、どこかで現実に立ち返るスイッチを持ってる気がする。「ま、高望みよね、わかってるけどさ」「こんなこと、起きるわけないわな、ははは」みたいな冷めた自覚がどこかにある。で、折り合いのつけどころが見つかったらわりとあっさり戻ってくる。(できない人も当然いる)
 でも、男の人はけっこう貫ける感じ。叶わなくても己の妄想の世界を守り抜いて生きていける感じがある。そういう、敢えて現実を見ない感覚があるからやりぬけることもあるわけで、それを責めても仕方ない。違う生き物なのね、こういうとこは。

 対談の中で監督が「日本には神様がいないので、死んだ人が神様になるんじゃないか」みたいなことを言ってて、それはなるほどなー、でした。
 昔で言うところの「お天道様が見ている」っぽい視点というか。自分を客観的に映す、自分を戒めるための鏡、みたいな。そういうのがないと、人間確かに傲慢になるもの。

 記事の最後に安藤さんが着ている服やアクセサリーのご紹介があるのが、元記事が女性誌だなーと思いました。金額が半端ねー(笑)。

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2009.11.26

こういう視点を望んでいたんだな…

 「深海のYrr」のネタバレ話、その2。

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2009.11.25

地球の長い午後っぽいフランスアニメって

 検索ワードランキングにあったんですが。
 「時の支配者」か「ファンタスティック・プラネット」ですよね。たぶん。
時の支配者〈デジタル・ニューマスター版〉 [DVD]
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ファンタスティック・プラネット [DVD]
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 …まさか、「ケイナ」じゃないよね。舞台的には似た雰囲気があるかもだけど、話は宮崎アニメっぽいし。
ケイナ デラックス版 [DVD]
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 と、今さらお役には立たないと思いますが書いてみる。
 検索ワードランキングは時々見るけど、「そのワードでここに来られたなんてすんません」的な気分になる。
 あと、五代くんの名前でうちにくる人が多いのはなぜだろう。

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2009.11.24

地獄ボタンが透けて見えました

ゼロの焦点 (新潮文庫)

 「深海のYrr」の終わりが見えてきていたので、「BOOK OFF」にて後がまを拾ってきました。そのうちの一冊は松本清張です。今映画をやってる「ゼロの焦点」が「点と線」に並ぶ代表作と聞いて選んでみました。
 松本清張は昔々何冊か、ミステリとして読んだ記憶があるけど、それっきりなのです。むしろ映画やドラマでなじんだ感じ。「濃ゆいっ」て印象があります。
 今月、NHKの「知る楽 こだわり人物伝」で取り上げてるのですが、なんとみうらじゅんが清張を語る回があったので見まして。
 おもしろい。視点が。というので、俄然清張読んでみたくなりまして。
 こつこつ地道にやってきた人が安泰を手に入れてふと立ち止まったとき、人生の地獄ボタンが見える。清張の作品って、それを押しちゃった人の話なんだ、みたいなことを言ってました。守るものができたが故に足を踏み外していく、みたいな。だから、歳とって読むと全然見え方が違う。ああ、オレの前にもボタンがあるよ、押しちゃったよ、って瞬間があるからぞっとする。
 みうらさんによると、清張はホラー小説なんだそうです。

 「ゼロの焦点」の冒頭10ページくらいを読んでみました。
 …こえー。清張こえー、まぢこえー。
 ヒロイン(映画では広末がやってる)が見合いでかなり年上の男と結婚して、新婚旅行に行って、二日めにそこの名所を回ろうと車で移動してて、というあたりまで読んだんですが、このヒロインの心情が! さして面識のない男と見合いで夫婦になっていく過程の心理がひーっていうほどリアルで怖かった。おっさん、なんでこのワクワクではないなりゆきと弛みで夫婦ができていく過程がこんなにわかるのよっ、みたいな。
 若いときは好き好きでらぶらぶで大盛り上がりっな恋愛とか結婚しか見えないわけですが、年取るとそれ以外の心境や関係も見えてきます。ちょっとした倦怠とか妥協とか、日常のなれ合いが作る関係性。理想より必要を選んで生きてったりとか。それはまー、人間毎日をドラマティックに過ごすのはしんどいので、必要なダレだと思うのです。
 この辺は十代ではとても読み取れない。清張、大人になって読まないとわからんところがたくさんあるな。
 時代とか価値観とか、書かれた頃とは変わったこともずいぶんあるけど、それでも共感できるところってあるものです。国民的作家と言われるのもむべなるかな。

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「深海のYrr」、読了

深海のYrr 〈中〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)

 長かった…。<一冊500P越え×3冊。
 そして、うなぎは出なかった。<イールってうなぎだと思い込んでいた。綴りが違います。
 いわゆるハリウッドスペクタクルっぽい、世界規模というか世界の海で人類を脅かす事件が多発! の内容を説明するのにそれなりにページが必要で、そこそこ数が多い上に個々に事情を抱えるメインキャラのバックグラウンドをそれなりに書き込んであるから長い。長いよー。てーか、アナワクくんのトラウマってあんなに書き込む必要があったのか、よくわからんよ…。
 キャラの事情が細かく書かれてるって言っても、掘り方が今時のラノベとかとは全く傾向が違うし、そもそもツンデレの美少女とか出ないし。メインが科学者と軍人だから、だいたい年齢はアッパー気味です。もっとも、ラノベだったら天才美少女科学者とかツン系の軍人少女とか出してくるだろうが。問題はヘタレで凡人の少年をどうやって主人公に送りこむか、か。
 結構ハデハデな活劇ものなので、特に中巻の半ばからはさくさく読んでいけると思います。ハリウッドが映画化権を買ったというのもよくわかる。でも、この話って実はアメリカ悪役じゃない? 長いから中身圧縮されるのとキャラ整理されるのは確実だけど、アメリカが悪役のままになるんだか。<ならないと思ってます。
 上巻をなんとか乗り越えて、続きを読みたいと思えれば、なかなか楽しめるエンタメ小説かと。ラストあたりのあの人とかあの人とかの下りはちょっとあっさりめに感じたけど、今時の日本の小説の傾向に慣れてるからかも。それから、欧米の人たちの日本の捕鯨に対する感覚にはちょっともにゃった。最早捕鯨は感情論の領域に行ってるからなあ…。
 エコなんとかっていうふれこみは、そんなに真に受けなくてもいいと思われ。あと、新鮮な海産物食べるのが好きな人は、読んでる間悲しくなるかもしれない。

深海のYrr 〈下〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)

 ネタばれになるのでアレですが(なので、読みたい人は以下を飛ばすこと)、

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2009.11.20

先生にケンカ売ってますね…

 ↓のNHKの番組は相方も見ていたのだけど、私よりも遥かに感覚が男の子の相方は(男なんだから当然かも、だが「子」なところがポイントだ…)私よりもさらに源氏に興味がない。TV見ながら「聞けば聞くほどこの男とその周辺を物語として知りたいという気に全くなれん」と呆れている。
 そうだろうねえ。私に輪をかけて、アンタ恋愛模様に興味ないもんねえ。
 そう言えば、と夕食のときにやつは思い出したように言うのである。
「高校の古文のテストで『須磨に流された源氏の気持ちについて書きなさい』って質問があったんで、『須磨くらいでひなびたところだと嘆き悲しむんだから、自分たちの住んでいる九州に来たらどれだけ悲嘆にくれるんだろうと思いました』って書いたなあ」
 …あんた、昔からとことん光源氏が嫌いだね(^^;)。
 ちゅーか、どう考えても先生にケンカ売ってるだろ!
 子どものころからろくなことをせんな。てーか、世渡りヘタだな…。<とりあえず本心は堪えて先生の機嫌を取るくらいの技は使えたわたくし。
 菅原道真が太宰府に流されて地の果てみたいに感じたそうですからねえ>九州。そこで失意のうちに亡くなって、怨霊になっちゃうくらいの場所ですからね。
 …流されればよかったのに>源氏。<私もたいがい。

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2009.11.19

「源氏物語」には向かない私

 そりゃあ世界に名だたる日本の古典ですから、私もことあるごとに源氏読んでみようかしら、と考えたものでした。
 数年おきに入門っぽい本を読んだりとか、解説的なTV番組を見たりとかしました。それで勢いついて、原典は無理としても現代語訳のどれかくらいは手にとってみたくなるんじゃないかと期待したもんですが。
 あかん。毎回むしろ源氏にいらっとして、「これは読めんわー」と苦笑いして終わるのです。源氏物語絵巻の修復過程を追ったドキュメントなんかはすごくおもしろかったんですけど。
 しかし性懲りもなく、先週今週と瀬戸内寂聴先生が源氏物語を男君たちの視点から語る番組を見ました。これってどうも、知る楽という教育番組でやったものの編集版だった模様。そして、やっぱり「ああ、こりゃあ私には向かない話だわ」と改めて噛みしめてしまったという。
 私の感覚はいかんともし難く「現代」なので、平安時代の人と価値観を共有するのはすごくむずかしいのは端から決まってますけども、さらに(乾いた心という故があるにせよ)恋愛を流れ歩く男なんて主人公にはもともと興味が限りなく低なのが性分なのですけども。
 栄耀栄華を極めながらも正妻を寝取られたり最愛の紫の上に先立たれたりして(どれもこれも身から出た錆としか言えんのだが)、晩年の源氏は人生の物悲しさを思うようなんだけども、そりゃそうだろと私はさらに思ってしまうのだ。だって、この人、地位と権力と財力を手に入れたけど、それに見合う何もしてないもんね。立派なお屋敷を立てて縁のある女性を引き取って住まわせたというけど、それって「私」の世界のことなのです。男が権力を手に入れる、それもよくしてくれた男としてのライバルを足蹴にしても上りつめるからには、その地位を使って何かを成し遂げるって展開でないと一気にそいつが凡人ちっくに感じちゃうんです。私の場合。
 男子一世の成し遂げるべき決意があって、そのための手段として地位や財力がある。
 仮に成り行きでその地位に就いたとしても、周囲との関わりの中で自分の成すべきポジションを見出す。
 歴史に残る男たちってそういうやつらです。私生活はしょーもなくても、不思議と「公」の世界に対しては抜群のセンスがあったりする。
 もちろん、権力と金に溺れて女にうつつを抜かして堕落のうちに人生を終える人もたくさんいるけど。それはそれで、また「物語」と割り切るならある種のおもしろみもあるだろうけど。
 光り輝く容姿と才能があると言われる男なら、それなりのことを成し遂げてくれないとねーと思っちゃうわけです。でなきゃ凡人じゃん。
 別に政治の世界でなくてもいい、美術や宗教の世界とか文化面を切り開いたっていいんです。でも、聞いても聞いても源氏の世界って「私」しかない。人の心模様の移り変わり、人の関わりの話なんですね。物語の主題が違うんだと言われたらそうなんだけど、だったら「私としては」あまり興味の持てない「物語」になっちゃうんですよねえ…。
 平安時代の女性にそういう視点を持った話を求めるのが無茶なのだけども。
 (当時なりの規模の)国のために、あるいは文化のために、何かを成して、でも没落する晩年を送り人としての弱さダメさをほの見せながら世を去る、みたいな話だったらそれなりに興味が持てたんだろうけどなあ。

 平安時代の生活や価値観等々を知る「文献」としては、おもしろいかもと思うけども。それだけじゃ読めないよなあ、あんな長い話。

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2009.11.04

「空気人形」を見ました

 体調は相変わらず今イチだったけど、いい加減上映終了しそうだったので。シネリーブルのスクリーンは何度見ても悲しいほどちっちゃい。シネテリエよりも座席がちゃんと傾斜しているから、前の人の頭で遮られない分よしとしなければ。

 これは大人のおとぎ話。なんだろう。だから、なぜとかどうしてとかどうやってとか考えちゃだめ。考えるような人は端から見に来ないだろうけど。
 あらすじを知ったときからいわゆるハッピーエンドにはならない物語なのは予想できてて、だからいつ空気人形の娘に破綻が訪れるのか、冒頭からはらはらしながら見ていた。最初の頃の、いかにも人形っぽくぎこちなくて子どもみたいな言動が少しずつ変わって、生き生きと楽しげなのが全身からあふれるようになればなるほど。
 ってゆーか、前評判で聞いていたが、監督どんだけペ・ドゥナが好きなんだ! と苦笑したくなるほどかわいく撮ってる。コスプレ服じゃなく、私服(どうやって入手したんだ、なんでこんなセンスいいんだ、てーか、なんでミニばっか?(笑)になってからがまた、無敵に愛らしくなっていく。確かもうアラサーな年の女優さんのはずなんだけど、かわいいとしか言いようがない。美人ではないと思うんだけど、無垢なかわいさがにじみ出てるというか。
 どーってことない大都市の狭間の、間口の小さな雑多な家々の、空き地同然の公園の、人工的に整地された海辺の、それでも切り取るときれいだと記憶される風景の数々。になるのは、空気人形の娘の目を通した世界だからなんだろう。
 ただの「人形」じゃなくて、始めから実用品で代用品として生まれてきた空気人形。持ち主の男もそういう人形なりに大事にしてるし、というか、そういう「人形」なんだからそれ以上どうしろと言われても困るよな。(昔の彼女に対する未練を綴ったブログをそういう人形に読まれるというのも、立場ない)でも心を持ってしまった人形にとっては、その「愛情」ではだめなわけで。
 それにしても、人間もどこか空っぽで彼女と変わりないんだというのはあくまで比喩であって、やっぱり人間と人形は違うから! なんとなく雰囲気で話すから、彼女が鵜呑みにしちゃってあんなことになるじゃないの! メルヒェンな言葉で自分が納得してるんじゃなくて、ちゃんと話してやれよー。
 アリエルが出てくるのはそういう意味だったのかと思った。人魚姫は人魚に戻るために王子を殺すのを拒否して海の泡になったのだけど、空気人形の娘はなんというか…。なんというか…。(ちゅーか、「リトル・マーメイド」はハッピーエンドだ、確か。なんてことだ)

 監督自身、これはえろいはずだと確信を持って撮ったという、やぶれて空気の抜けた彼女の身体に片思いしている青年が息を吹き込んでやるシーンはほんとに切なくてえろい。生なえろよりリリカルで切ないえろがある。
 そして、映画ファンには怒られるだろうけども、「人造人間キカイダー」のアニメ版でジローがミツコに修理してもらうシーンを思い出した。あれも意図的にえろい演出がしてあって、やっぱり切なかった。
 好きな相手に生死をゆだねるというのがえろに通じるのだろうか。

 R-15指定の映画を、そうなんだーと思って初めて見て、なるほどR-15なんだねー(^^;)と思った。一緒に見る相手によってはびみょーに気まずい。<一人で見ました。
 R-15に期待して見に行った二十歳未満の男の子たちは、心のない性の哀しさを空気人形の娘から感じ取るように。

 ふと思い出したけど、去年洋画でやっぱりリアルドールものがあったなあ。と思って検索。
 こっちはハートウォーミングでハッピーエンドみたいです。こっちも見てみようかしら。
ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]

↑というわけで探してみた。「ラースと、その彼女」

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